Zガンダムとアトラスガンダムが一騎討ちを行う場合、アトラスガンダムは宇宙空間での運用が前提ではないため、本シミュレーションでは地球上の障害物のない広大な平原を戦場とし、重力下で両機が正面から相まみえるシチュエーションを想定する。

可変MSとして大気圏内でも高い飛行性能を発揮するZガンダムと、水陸両用サブレッグによって地表および水上で異常な機動力を見せるアトラスガンダムという、「空を支配する可変機」と「地表と低空を駆ける水陸両用機」のぶつかり合いになる。

ここではまず両機の機体性能とパイロットの戦闘スタイルを整理したうえで、序盤戦・中盤戦・終盤戦の流れを段階的に追い、一騎討ちという条件でどちらが優位かを再現性という観点から分析する。

戦力分析

機体

Zガンダム

ZガンダムはMS形態とウェイブライダー形態を切り替える可変MSであり、大気圏内でも高出力スラスターと機体形状による揚力を活かして戦闘機並みの高速飛行を行えるうえ、ホバリングに近い低速飛行から急制動・急上昇・急降下までを滑らかに繋げられる三次元機動性を持つ。

MS形態では多関節スラスターと姿勢制御バーニアにより、地表すれすれから上空までを縦横無尽に移動しつつ、ビームライフルとグレネードランチャー、シールドミサイル、ビームサーベルを使い分け、中距離射撃戦から近接格闘戦まで破綻なく対応できる万能戦闘機として機能する。

ウェイブライダー形態では機体断面積が小さくなることで被弾面積を抑制しながら音速近い水平飛行を実現し、突入直前にMS形態へ変形して射撃や斬撃に移行する「上空からの一撃離脱」を高い精度で繰り返せるため、対地・対MSの両方において立体的な奇襲が可能となる。

さらにバイオセンサーの存在により、パイロットの精神が極限状態に達した際にはビーム兵器の出力増大や光のバリアめいた現象など、カタログスペックを一時的に超えるピーク性能を引き出すポテンシャルを秘めている。

アトラスガンダム

アトラスガンダムは一年戦争末期に極端な水陸両用性と高速戦闘を両立させる目的で開発された機体であり、特徴的なサブレッグユニットを装備することで、地上ではスキーやスケートのように地表を滑走し、水上や水中ではボードとして機能するハイブリッドな機動プラットフォームである。

地上戦ではサブレッグの推進力と反発を利用し、ホバーに近い状態で高速移動しながら、短時間の跳躍を織り交ぜることで平原であっても縦方向の揺さぶりを加えられ、従来の陸戦MSでは追い切れないような変則的なベクトル変更を実現する。

主兵装のレールガンは高初速の実体弾による長距離狙撃と近距離の直射が可能であり、命中すれば装甲の一部を大きく抉る破壊力を持つが、ビームライフルと比較すると連射性と融通性にはやや欠ける一撃重視の兵装である。

サブマシンガンやシールド内ビーム兵器なども装備しているが、ビーム兵器の出力自体は一年戦争期の水準に留まり、ビーム火力という意味ではグリプス戦役期の主力量産MSやZガンダムと比べると見劣りする。

大気圏内の地表・水上戦に特化した設計ゆえに、上空高高度での長時間飛行や宇宙空間での万能運用は想定されておらず、今回のような「地上平原での一騎討ち」という条件は、アトラスガンダムにとってもっとも戦いやすい土俵となる。

パイロット

カミーユ・ビダン

カミーユ・ビダンは高度な空間認識能力と感応力を持つニュータイプであり、敵機の存在感や殺気の向きそのものを感覚として捉え、レーダーや目視の情報を待たずとも「危険な方向」を察知して先回りの回避行動を取れる。

可変MSの操縦にも長けており、ウェイブライダー形態での高速突入からMS形態への変形、慣性を活かした旋回と同時の射撃、そこから一気にビームサーベル間合いまで踏み込む一連の流れを高G環境下でも破綻なく遂行できる。

戦闘中に感情が激しく揺れ動いた際、バイオセンサーと共鳴して機体出力や反応性が一時的に跳ね上がる傾向があり、その状態ではビーム兵器の威力や防御現象が常識を逸脱することすらあるが、その代わり精神的負荷も大きく戦闘後の消耗は激しい。

イオ・フレミング

イオ・フレミングはコロニー内外の苛烈な戦闘を生き抜いたエースパイロットであり、ジャズのリズムに身体を乗せながら敵味方関係なく戦場を楽しむかのような戦闘スタイルを取るが、その裏には状況把握と瞬間判断の鋭さが隠れている。

サンダーボルト宙域での高機動戦闘や、水中・水上戦を含む多様な環境での実戦経験が豊富であり、アトラスガンダムのサブレッグ特性を活かした滑走・跳躍・急制動をリズミカルに繋ぎ、敵の照準とタイミングを外し続けるセンスに優れる。

ただしイオ自身はニュータイプではなく、Zガンダムのような可変高機動機と対峙した場合、センサーと視界に頼る反応速度では、ニュータイプの「先読み」との勝負でどうしても不利な場面が生じる。

また彼の戦闘スタイルはしばしばリスクを恐れないギリギリの踏み込みに寄るため、一騎討ちにおいては「決まれば一気に形勢逆転、外せば即致命傷」という大振りな賭けに出がちな側面もある。

Zガンダム vs アトラスガンダム|戦闘シミュレーション

序盤戦

戦闘開始時、広大な平原の上空をZガンダムがウェイブライダー形態で旋回し、アトラスガンダムは地表すれすれをサブレッグで滑走しながら、対空狙撃のためにレールガンを構える形で対峙する。

イオは高高度のシルエットと突入角度からZガンダムの初動パターンを読み、敢えて速度を落として緩やかなカーブを描きつつ横移動し、自らを「動く標的」として扱いながらも、相手の進入コースが一点に収束するのを待つ。

カミーユはニュータイプとしての感覚でレールガンの高圧電磁場と殺気のベクトルを捉え、正面から一直線に降下するのではなく、左右への偏差と高度の微妙な上下を織り交ぜたジグザグの急降下軌道で、予測照準を外しにかかる。

アトラスガンダムのレールガンが火を噴き、超高速の弾体が空気を裂いてZガンダムの通過した直後の空間をえぐり、遠方の大地に巨大な土煙とクレーターを生み出し、その威力が直撃すればZガンダムであってもひとたまりもないことが示される。

Zガンダムはその初撃を紙一重で回避しつつ、降下の終盤でMS形態へ変形し、スラスター逆噴射で減速しながら中距離で水平飛行へと移行し、ビームライフルとグレネードによる牽制射を地表を滑走するアトラスに浴びせる。

アトラスガンダムはサブレッグを軸にスライドと急停止を組み合わせ、ビームの軌道をギリギリで外しながら、時折サブマシンガンで迎撃しつつ、再びレールガンに次弾を装填する。

この時点では、一発当たれば逆転しうるアトラスのレールガンに対し、Zガンダムが立体軌道と中距離火力で圧をかけるという、ややZ優勢だが決定打には至っていない探り合いの状態が続く。

中盤戦

中盤に入り、イオは遠距離狙撃だけではZガンダムの可変機動を捉えきれないと判断し、レールガンを中距離の直射兵器として活用するために、意図的にZガンダムとの距離を詰める大胆な選択を取る。

アトラスガンダムはサブレッグの推進力を最大限に活かし、地表を滑るように高速接近しながら、時折サブレッグで弾むように跳躍して上下方向の揺さぶりをかけ、Zガンダムの射線と照準を乱す。

カミーユは真下から迫るアトラスの速度変化とレールガンの砲口の向きから、このまま高度を維持すれば「斜め下からの迎撃射」を喰らうと直感し、あえて一度高度を大きく落として地表近くまで降りる選択をする。

ZガンダムはMS形態のまま低空に入り、アトラスとほぼ同じ高度で水平移動しながら、ホバーと短い跳躍を組み合わせた地表すれすれのドッグファイトに応じることで、レールガンの射角優位を打ち消しにかかる。

ここからの戦闘は、サブレッグによる滑走と短距離ジャンプで横方向に大きく振るアトラスガンダムと、バーニアとスラスターで縦横斜めに細かくベクトル変更するZガンダムの、「地表主導の高速機動」と「三次元主導の高機動」が交錯する非常に目まぐるしいものとなる。

アトラスのレールガン弾が数発Zガンダムのシールドや脚部装甲をかすめ、局所的に装甲材を剥がしてスパークを散らす一方で、Zガンダムのビームライフルもアトラスのシールドやサブレッグ表面を焼き、白煙と焦げ跡を刻んでいく。

両機ともまだ決定的な損傷には至っていないが、継戦すればするほどビーム火力とエネルギー効率に勝るZガンダム側が有利な削り合いであり、イオはこのままではじり貧になると悟り、終盤に向けてさらに踏み込んだ一手を選ばざるをえなくなる。

終盤戦

終盤、イオは自らの得意とする「一瞬の博打」に戦局を委ねる決断を下し、レールガンを肩越しに構えたままサブレッグで一気に加速してZガンダムとの距離を極限まで詰め、至近距離からの直射で装甲ごと撃ち抜く決戦パターンへ移行する。

アトラスガンダムは地表を抉るほどの勢いで滑走し、その勢いを殺さないままサブレッグでバネのように跳躍して、Zガンダムのやや下側から斜め上へと食い込む軌道を取り、レールガンの銃口をカミーユの気配に向けてわずかに持ち上げる。

カミーユもまた、イオの意図をニュータイプとしての感応で察知し、正面からの撃ち合いではなく「踏み込みの直前」に時間を止めるような一瞬のカウンターを狙うべきだと直感し、その集中がバイオセンサーに火をつける。

Zガンダムのコクピット周辺に淡い光の粒子が浮かび、機体応答性とカミーユの反応速度はさらに研ぎ澄まされ、アトラスの跳躍開始の気配とともに、その後に続くであろうレールガンの射線がイメージとして頭の中に描かれる。

アトラスガンダムが跳躍し、レールガンに電磁加速の光が満ちる瞬間、Zガンダムはあえて真正面からの退避ではなく、地表に向かって急降下するという逆転のベクトルを選び、アトラスの弾道予測を意図的に外しにかかる。

レールガンの閃光が空間を貫き、Zガンダムの直前を通過して遥か彼方の大地に巨大な爆炎を咲かせるのとほぼ同時に、Zガンダムは地表すれすれでスラスターを全開にして急制動し、そのまま反転して跳躍してきたアトラスの懐へと飛び込む。

カミーユはバイオセンサーに後押しされた反応速度でビームサーベルを最大出力で展開し、レールガンを構えたアトラスの腕部から肩部にかけてを一気に切断し、そのままサブレッグの接合部と脚部フレームをまとめて薙ぎ払うことで、機動力の大半を奪う。

サブレッグを失ったアトラスガンダムは、地表に叩きつけられるように転倒し、イオは即座に上半身のみで姿勢を立て直しつつサブマシンガンで抵抗を試みるが、すでにZガンダムは上空で一度距離を取り直し、ビームライフルで関節とバックパックを正確に撃ち抜き、戦闘継続能力を完全に破壊する。

勝敗分析

勝敗判定

この一騎討ちは、Zガンダム(カミーユ・ビダン)の勝利と判定する。

勝因分析

第一に、機体世代と汎用性能の差が大きく、Zガンダムは空間戦・大気圏内戦ともに高水準でこなせる可変高機動機であるのに対し、アトラスガンダムはあくまで一年戦争期の技術に基づいた水陸両用高速機であり、推力・ビーム火力・センサー性能のいずれも総合的にはZガンダムに劣る。

第二に、戦闘レンジの広さと武装の柔軟性においてZガンダムが優位であり、遠距離・中距離・近距離すべてで安定した選択肢を持つのに対し、アトラスはレールガンという強烈な切り札こそあるものの、外した際のリカバリーと継戦能力に難がある。

第三に、ニュータイプであるカミーユの感応力とバイオセンサーの存在により、イオのリズミカルで変則的な機動やレールガンの殺意を「来る前に察知する」ことが可能であり、決定的な一撃をギリギリで回避しつつ、逆に踏み込みの瞬間を捉えたカウンターに繋げられる。

アトラスガンダムのサブレッグ機動は確かに平原において脅威だが、Zガンダム側があえて高度を落として同じレンジで戦うことを選び、三次元機動とビーム火力を合わせて主脚を重点的に破壊しにいけば、その強みは切り崩されていく。

総じて、レールガンが一発でも致命所に直撃すればアトラス側にも逆転の芽はあるものの、再現性と勝率という観点ではZガンダムの方がはるかに安定して優位に立てるカードだと評価できる。

敗者側に勝利の可能性はあったか?

アトラスガンダム側に勝ち筋があるとすれば、「レールガンの初撃をどこまで高確率で通せるか」にほぼ集約される。

開幕直後から徹底して高度差を利用し、地表側の低い位置からZガンダムの降下経路と加速ベクトルを読み切ったうえで、跳躍と滑走を組み合わせたタイミングで迎撃射を重ねられれば、Zガンダムの可変機動をもってしても回避困難な状況を作り出せる可能性がある。

またレールガンに固執せず、中距離でのサブマシンガンとビーム兵器を絡めた削り合いから、脚部やスラスターを重点的に狙ってZガンダムの機動力を奪い、そのうえで位置エネルギー差の少ないレンジに持ち込んだうえでの直射という、二段構えの戦術も考えられる。

しかしニュータイプであるカミーユの感覚とバイオセンサーのフォローを前提とすると、その「一瞬の的中」を安定して再現するのは難しく、外した場合にはレールガンの反動と硬直がそのまま致命的な隙に変わるリスクが高い。

したがって、理論上の逆転パターンは存在するものの、長期的な勝率という意味ではZガンダム優位という結論を覆すほどのものではないと判断せざるをえない。

まとめ| Zガンダム vs アトラスガンダム

Zガンダムとアトラスガンダムの一騎討ちは、「空を制する可変ニュータイプ機」と「地表と水上を駆ける水陸両用高速機」という、異なる環境適性と設計思想がぶつかり合うカードであり、一年戦争末期とグリプス戦役期という技術世代の差も色濃く表れる対決である。

アトラスガンダムはサブレッグ機動とレールガンによる一撃必殺性で局所的にはZガンダムを追い詰めうるが、総合性能・ビーム火力・センサー・継戦能力に優れるZガンダムは、距離と高度をコントロールしながら相手の強みを削ぎ落とし、最後はバイオセンサー覚醒を含む近接戦で勝負を決められる。

結果としてこの一騎討ちは、レールガンが奇跡的な直撃を見せる一部のケースを除けば、おおむねZガンダムの勝率が高いカードと評価でき、技術世代とニュータイプの優位性が素直に反映された結論となる。