バウンド・ドッグの対戦一覧表
| 対戦カード | 宇宙・中距離 | 宇宙・近距離 | 宇宙・遠距離 | 地上 |
| バウンド・ドッグ vs ガーベラ・テトラ | 敗北 | 敗北 | 敗北 | 敗北 |
| バウンド・ドッグ vs ル・シーニュ | 敗北 | 敗北 | 敗北 | 敗北 |
バウンド・ドックの武装
バウンド・ドック(NRX-055)は、ティターンズが運用した可変型モビルアーマーで、ムラサメ研究所でニュータイプ用に調整されたという来歴そのものが「武装の思想」を決めている機体だ。旧ジオン軍モビルアーマーのMAM-07 グラブロをベースにした異形の外殻と、MS形態へ変形した際に左右非対称の上半身が現れる構造は、正面装甲の厚みと死角の多さをトレードにして、近距離で一気に刺す武装配置へ寄せている。MA形態からMS形態へ移る過程で、MA時のメインカメラが左腕部に移り、クローアームが両脚になるという変形ギミック自体が、格闘用の拘束と射撃の押し付けを同一の間合いで成立させる前提になっている。
射撃の主軸はビーム・ライフルと拡散メガ粒子砲だ。遠距離ではビーム・ライフルで牽制し、接近の読み合いを作ったうえで拡散メガ粒子砲の面制圧へ繋ぐのが基本線になる。拡散メガ粒子砲は一点突破の狙撃ではなく、角度と距離で逃げ場を消す兵装で、グリプス戦役のようにコロニー内外、宙域、艦艇周辺といった限定空間で効きやすい。回避行動を強制し、相手の進路と姿勢を乱し、次の拘束や追撃に繋げる性格が強い。さらに、単なる面制圧に留まらず、至近距離で叩き込めば機体の耐久限界を一気に越えうる「圧」を持つ点が、実験機らしい怖さになっている。
白兵戦の核は、脚部へ変形するクロー・アームとビーム・サーベルの連携だ。クローは脚としての推進と姿勢制御を担いつつ、前方へ展開して敵機を拘束する用途を持ち、ここで勝負が決まる。拘束が成立すれば、相手は推進の自由度を奪われ、盾やライフルの保持姿勢も崩され、反撃の初動が遅れる。その瞬間にビーム・サーベルで関節やコクピット周辺を斬り裂く、あるいは拡散メガ粒子砲を至近で浴びせる、という「拘束→確定火力」の流れが成立する。クローは攻防一体の武装であり、可変機でありがちな「姿勢が整うまで火力を出し切れない」という弱点を、むしろ拘束で強引に消す役割を担っている。
搭載武装はシンプルに見えて、運用者と状況で凶悪さの出方が変わるのもバウンド・ドックらしさだ。ロザミア・バダムが搭乗した機体、ゲーツ・キャパやローレン・ナカモトがサイコガンダムMk-II随行で用いた複座式の機体、そしてジェリド・メサが乗った機体という差異は、同一フレームでもチューニングや操縦適性が武装の当て方に直結することを示す。拡散メガ粒子砲とクローという「間合いを詰めて押し切る装備」を、誰がどこまで“当て切る形”に落とし込めたかが、戦果と生存に直結する。だからバウンド・ドックは、兵装スペック以上に「操縦者の判断が武装そのものになる」危険な可変機だ。
ジェリド・メサの思想とパイロット能力
ジェリド・メサの根にあるのは、ティターンズという「選民的な権威」に自分の価値を重ねる上昇志向だ。グリーン・ノア1でガンダムMk-IIの慣熟飛行中に事故を起こし、機体をカミーユ・ビダンに奪取された出来事が、彼の人生を決定的にねじ曲げる始点になった。成績が優秀で他人を見下す性癖、自分のやり方に固執して現場の変化へ柔軟に対応しきれない面、命令を忠実に守った結果としてヒルダ・ビダンを死なせてしまった点、さらにライラ・ミラ・ライラの死がカミーユとの確執を深めた点まで、思想というより「組織と自尊心への依存」が行動原理として積み上がっていく。
この上昇志向は、単なる出世欲ではなく「自分が正しい側にいる」という確信へ変質しやすい。ティターンズの制服や階級、同期のカクリコン・カクーラー、同僚のエマ・シーンといった環境は、彼に“選ばれた者”の感覚を与える一方で、失点した瞬間に自己像が崩れる危うさも抱えさせた。カミーユとの因縁は、個人的な口論から始まりながら、次第に「壁」として意識し、打倒への固執で人生が狂っていく関係へ変わる。つまり彼の思想は、ティターンズの権威と自分の面子を同一視し、否定されることを許容できない構造になっていく。
一方で、パイロットとしての資質が弱いから負け続けた、と断じるのはズレる。ティターンズに抜擢され、ガンダムMk-IIのパイロット候補に入る時点で、少なくとも基礎操縦・戦技の評価は高い。問題は、戦場で伸びるべき局面で、怒りと執着が判断を狭める点だ。それでも戦争終盤にかけて操縦技能は向上し、バイアランやバウンド・ドックのような癖の強い新型機へ食らいつく学習速度を見せる。可変機や試験機は、推力配分、姿勢制御、武装の射線管理、変形のタイミングまでが勝敗を分けるため、乗りこなすだけで操縦者の総合力が要求される。ジェリドはそこへ到達したが、精神面の不安定さが同時に露呈していく。
結局、ジェリドの強さは「執念で前へ出続ける攻撃性」と「新型機へ適応する学習速度」にあり、弱さは「自尊心の防衛が戦術目標を上書きする」点にある。冷静に勝利条件を組み立てられる瞬間のジェリドは危険で、間合いを詰め、拘束し、確定火力で仕留めるという短い手順を迷いなく実行できる。しかしカミーユという存在に意識が引っ張られた瞬間、武装が全部「復讐の道具」に変わり、射撃の選択、追撃の角度、撤退の判断が歪む。だからバウンド・ドックに乗るジェリドは、機体の凶悪さと操縦者の執着が噛み合えば最悪の脅威になり、噛み合わなければ自滅へ近づく、という振れ幅そのものが彼の人物像を象徴する。
