ビギナ・ギナの対戦一覧表
| 対戦カード | 宇宙・中距離 | 宇宙・近距離 | 宇宙・遠距離 | 地上 |
| ビギナ・ギナ vs ガイア・ギアα | 敗北 | 敗北 | 敗北 | 敗北 |
ビギナ・ギナの武装
ビギナ・ギナ(XM-07)はクロスボーン・バンガードの指揮官用試作MSとして運用され、パイロットはベラ・ロナ(セシリー・フェアチャイルド)とされる。主兵装はビーム・ライフルとビーム・シールドが中心で、小型MS世代(宇宙世紀0120年代)の戦闘思想に合わせ、瞬間加速と姿勢制御を活かした「短時間露出・高頻度射撃」を成立させる構成になっている。装備体系は派手な新機軸よりも、確実に当て、確実に守るという“指揮官機の実務”に寄せられ、部隊行動の中で破綻しないバランスを優先した印象が強い。
射撃武装の核はビーム・ライフルで、クロスボーン・バンガード量産機であるダギ・イルス系(XM-06)に由来する装備を改良した試作タイプと説明される。照準器の取り回しやグリップ形状、全体剛性の調整は、コロニー内部や外壁面のように射線が限定される戦場で、素早いサイト合わせからのワンショット、回避噴射、再照準というテンポを作るための実戦的な変更と解釈できる。編隊戦ではザビーネ・シャルのようなエースが前線を撹乱し、ベルガ・ギロスやベルガ・ダラスが敵の進路を狭める中、ビギナ・ギナが「決める射撃」を差し込む役回りがよく噛み合う。
防御の要は前腕部に固定装備されるビーム・シールドで、ビーム刃を面として展開する発想により、ビーム兵器に対しても実体弾に対しても防壁として機能する。さらに、機体そのものに接触しそうな部分は自動的に出力を落とす制御が語られ、小型MSの接近戦で起きがちな自損事故を抑える安全設計が盛り込まれている。近接装備としてはビーム・サーベルを複数備え、シールドで受け流してからサーベルで踏み込み、間合いを詰めたまま一気に勝負をつける「受け→斬り」の連続動作が組み立てやすい。
追加・状況装備として言及されるのがビーム・ランチャーで、地球連邦軍MS用の大口径ビーム兵器を、ベラが離反した後に運用したと説明される。専用装備ではないが、規格互換や運用の柔軟性によって“現地で拾った火力”を即戦力化できる点は、クロスボーン・バンガード側の実利主義を示す。加えて、指揮官機らしい装備としてビーム・フラッグ・エミッター(戦場標識)も挙げられ、隊形や進路を「旗」で可視化して味方の認識を揃える機能は、騎士道的演出と戦術合理性が同居したクロスボーン・バンガードの象徴的な道具立てになっている。
セシリー・フェアチャイルドの思想
セシリー・フェアチャイルドは本名をベラ・ロナとし、ブッホ・コンツェルンを背景に持つロナ家(マイッツァー・ロナ、カロッゾ・ロナ、ナディア・ロナ)に連なる立場へ引き戻される運命を背負う。幼少期にナディアが「コスモ貴族主義」へ反発して出奔し、シオ・フェアチャイルドの娘としてフロンティアIVで育った経緯は、彼女の価値観に「血統で役割を決められること」への違和感を早い段階で刻み込む。学園で“クイーン”と呼ばれるほどの華やかさを持ちながらも、その中心には常に「私は誰として生きるのか」という自己同一性の不安があり、これがのちの思想的分岐点を作る。
その揺れが決定的に露出するのが、クロスボーン・バンガードのフロンティアI侵攻と、迎賓館でのマイッツァーとの再会だ。セシリーはコスモ・バビロニアの「女王」として、民衆の心を統合する象徴になることを求められ、当初は拒むが、やがて髪を切り、ロナ家の女として振る舞う道へ傾く。この段階の彼女は、貴族主義に心酔しているというより、巨大な歴史の奔流に巻き込まれ、逃げ場を失い、シーブック・アノーとの関係すら断ち切られた喪失感の中で、「役割を引き受けるしかない」という切迫に押し流されている。つまり“受動的な受容”が先に立ち、思想はまだ自分の言葉になり切っていない。
だが戦争の現実は、彼女の内面を観念から責任へ引きずり出す。フロンティアIVでの日常が崩壊し、バグによる無差別殺戮が民間人を呑み込み、ザムス・ガルの圧力が逃げ道を塞ぐ中で、コスモ貴族主義の看板が孕む暴力性が“現場の血”として突き付けられる。さらに父である鉄仮面(カロッゾ・ロナ)の存在は、家族という最小単位すら思想の道具に変える冷酷さを示し、セシリーに「正しさは血統から生まれない」という確信を芽生えさせる。敵味方としてMSパイロットになったシーブックと戦場で再会し、互いの声で存在を確かめ合う瞬間は、国家や家名より「個人の命と意思」を判断基準に置く転換点になる。
結果としてセシリーはスペース・アーク側へ身を寄せ、ラフレシアとの決戦において“父に挑む”選択へ踏み込む。それは家名への反逆というより、虐殺を止めるために自分が矢面に立つ倫理の行動化だ。のちの時代にベラ・ロナとして貴族主義を否定し、人の平等を掲げる姿勢は、単なる理想論ではなく、象徴として担ぎ上げられた当事者が制度の矛盾を内部から断ち切る自己否定でもある。さらに新生クロスボーン・バンガードを率いる立場では、無用な殺戮を避け、捕縛を優先する規律を志向する点に、彼女の思想が「強さ」よりも「終わらせ方」を重視する方向へ成熟していく輪郭が見える。セシリーの思想とは、出自に縛られた象徴から、戦争を止めるために責任を引き受ける指揮官へ変わっていく過程そのものだ。
