宇宙世紀の可変ニュータイプ専用機Zガンダムと、暗殺特化のガンダニュウム製MSガンダムデスサイズヘル(EW版)が、何も遮るもののない真空空間で一対一の決闘を行うとき、この戦いは「未来を感じ取るニュータイプ」と「存在そのものを消すハイパージャマー」という、相反する認識世界のぶつかり合いになる。
Zガンダム側はバイオセンサーとカミーユの第六感によって、たとえ姿が見えなくとも相手の殺気や接近の気配を「輪郭」として掴むことができる一方、デスサイズヘル側はハイパージャマーと巨大なクロークにより、センサーや視覚情報はもちろん、敵に「狙われている」という実感すら与えないまま死の間合いに入り込むことを得意とする。
中長距離の射撃戦と可変機動を基軸に戦場をコントロールするZガンダムに対し、ガンダムデスサイズヘルは接近して一撃で仕留めることを前提に設計された「宇宙用鎌使い」であり、この戦いはレンジと探知能力、そして一撃を通すタイミングを巡る極めて繊細な読み合いとなる。
戦力分析
機体
Zガンダム
ZガンダムはMS形態とウェイブライダー形態を高速で切り替えることで、汎用MSとしての機動性と戦闘機的な高速突撃能力を両立させた可変MSであり、縦横無尽なベクトル変更と急制動によって敵の照準予測を狂わせることに特化した設計になっている。
主兵装の高出力ビームライフルは同時代のMSを一撃で撃破しうる火力を持ち、腰部グレネードランチャーや頭部バルカンと組み合わせることで、接近しながら局所的に高密度の火線と爆発を発生させ、敵の視界とセンサーにノイズを撒きつつ間合いを取り直す「撃ち逃げ戦法」を可能にしている。
シールドにはビームガンやミサイルを内蔵しており、受けに使うだけでなく攻撃的な運用もできるが、可変機構を内包した全体のフレームは重MAクラスと比べて装甲厚が抑えられており、高出力ビームを真正面から受け続けるような耐久戦には本質的に向いていない。
最大の特徴であるバイオセンサーは、カミーユのニュータイプ的な感応を機体制御系へ直結させることで、理論値を超えた反応速度や、敵の気配に対して先回りで回避機動を取るような「機体が先に動く」挙動を引き出し、極限状態ではビームの軌道すら直感的に「ずらす」ような機動を可能にする。
とはいえ出力や装甲といった純粋な数値面では、ガンダニュウム合金で構成されたガンダムタイプと比べて見劣りする部分もあり、長期戦や被弾を前提にした殴り合いではなく、読み合いと一瞬の爆発力に賭ける機体であると言える。
ガンダムデスサイズヘル(EW版)
ガンダムデスサイズヘル(EW版)は、暗殺と強襲を主眼に置いて再設計されたMSであり、両肩から伸びる巨大なアクティブクロークとハイパージャマーの組み合わせによって、レーダーや赤外線はもちろん、光学的な追尾すら困難にする「見えない死神」として機能する。
機体構造にガンダニュウム合金を採用しているため、同時代の通常兵器はほとんど通用せず、高出力ビームに対しても軽微な被弾ならば装甲表層でエネルギーを散らすことで致命傷を避けられるうえ、クローク自体もビームや実体弾の一部を遮断する物理シールドとして働く。
主兵装のツインビームサイズは高出力のビーム刃を二又の鎌として形成し、装甲やバインダー、スラスターをまとめて刈り取るようなスイング攻撃を可能にしており、近接戦に持ち込めば一振りで敵MSの上半身を飛ばしうる破壊力を持つ。
さらにバスターシールドは、ビーム刃を展開した状態で投擲兵器としても使用できるため、中距離から敵の回避運動を強制しつつ、その死角からハイパージャマーで姿を消した本体が接近してトドメの一撃を叩き込むという「二段構えの殺し」を組み立てることができる。
総じてガンダムデスサイズヘル(EW版)は、火力そのものよりも「敵に狙われる前に接近して一撃で沈める」ことに特化した設計であり、真正面から撃ち合う機体というより、情報優位と奇襲で戦場を制する影のハンターだと言える。
パイロット
カミーユ・ビダン
カミーユ・ビダンは、戦場での経験とトラウマの蓄積によって鋭く研ぎ澄まされたニュータイプであり、敵機の位置や殺意はもちろん、機体越しに伝わる「嫌な予感」や「死の気配」をほとんど無意識のレベルで感じ取り、それを即座に回避行動に落とし込む反射神経を持つ。
可変MSの特性を熟知した操縦技量は極めて高く、ウェイブライダーで一度戦域の外へ大きく離脱してから高速度で切り返し、敵の死角へ滑り込むように変形突撃を行うといった三次元的な攻めを得意とし、真正面の撃ち合いではなく「相手に対処を迫り続ける側」でいることで主導権を握る。
また、グリプス戦役を通して強化人間や巨大MAと何度も死闘を演じてきた経験から、敵機の撃破よりも推進系やセンサー、武装ユニットといった「戦闘継続能力の中枢」を優先的に狙う癖が身についており、格上のスペックを持つ相手に対しても局所破壊で食らいつく戦い方を本能的に選びやすい。
反面、その感受性の強さは諸刃でもあり、敵の負の感情や戦場の死のイメージを浴び続けることで精神的な負荷が急速に高まり、バイオセンサーとの共鳴が暴走すれば、冷静な判断よりも感情と直感に任せた危険な突撃に傾きやすくなる脆さも抱えている。
デュオ・マックスウェル
デュオ・マックスウェルは、潜入・破壊工作・奇襲を生業としてきたパイロットであり、正面からの撃ち合いではなく、敵に気づかれないまま死角へ回り込み、一撃で無力化して去るという「死神」のような戦術を何度も成功させてきた実戦経験豊富なエースである。
ガンダニウム製MSの重量と反応を熟知した操縦技量は高く、デスサイズヘルのハイパージャマーを最大限に活かすための「見せる機動」と「完全に消える機動」の切り替えが巧みであり、わざと一瞬だけ姿を晒して敵の視線を釘付けにし、その裏側のベクトルから斬撃をねじ込むようなフェイントを得意とする。
また、戦場におけるデュオは軽口を叩く印象とは裏腹に、任務達成のためなら躊躇なく敵の急所を狙う冷静さを持ち、同情や感傷よりも「確実に仕留めること」を優先するため、一騎討ちにおいても相手の逃げ道や反撃の芽を潰しながら詰めていく粘り強さを発揮する。
ハイパージャマーと暗殺術に支えられた彼の戦い方は、センサーと視覚に依存するパイロットにとっては悪夢のような脅威となる一方、ニュータイプのように「気配」を感じ取る相手に対しては、その感覚を逆手に取ったフェイントや心理的揺さぶりを仕掛ける余地も生み出す。
Zガンダム vs ガンダムデスサイズヘル(EW版)｜戦闘シミュレーション
序盤戦
戦闘開始と同時にZガンダムはウェイブライダー形態で大きく外周へ広がるように加速し、長距離から戦域全体を舐めるようにレーダーと光学センサーでサーチしながら、ビームライフルを構えて「姿の見える目標」を探ろうとするが、その視界には何も映らず、センサーにも不自然なノイズだけが走る。
空間のある一点に、まるで「そこだけ真空の密度が違う」ような嫌な圧迫感をカミーユはニュータイプ的感覚で捉え、バイオセンサーはその気配に反応してわずかに輝きを増し、Zガンダムの操縦系はカミーユの意思よりも先に、そちらの方向へ向けて自動的に舵を切る。
同じ瞬間、ガンダムデスサイズヘルはハイパージャマーとクロークを展開したまま、完全にセンサーから姿を消してZガンダムの死角へ滑り込みつつあり、デュオは一度もロックオンマーカーを点灯させることなく、接近限界距離ギリギリまで推力を抑えた静かな機動で間合いを詰めていく。
カミーユは得体の知れない圧迫感の正体を掴みきれないままビームライフルをその方向へ向け、バイオセンサーの誘導に任せて一射を放つが、デュオはそのわずかな銃口の揺れを読み取り、発射直前に逆ベクトルへ小さく跳ねて射線から外れ、ビームは何もない空間を無駄に焼くだけに終わる。
この一合で、カミーユは「視覚とレーダーに映らないのに確かに殺気だけが迫ってくる」という通常とは違う手応えを知り、デュオは「ニュータイプ特有の感覚でこちらの存在をぼんやりと捉えている」と理解し、互いに相手の長所を意識した警戒度の高い中距離戦へと移行していく。
中盤戦
ZガンダムはウェイブライダーからMS形態へ変形し、ビームライフルの連射とグレネードランチャーによる爆発の幕を張ることで、ハイパージャマーの効力を上回る「空間そのものへの圧力」をかけていき、見えない死角をまとめて潰すような面制圧でデスサイズヘルの接近ルートを限定しようとする。
対するデスサイズヘルは、爆発とビームの網の縁をすり抜けるようにクロークを閉じ開きしながら姿勢を変え、直撃を避けつつもあえて一部のビームをクローク表面に掠らせることで「どの方向から来たか」を悟らせない残光とノイズを意図的に戦域へ散らし、カミーユの感覚に偽の気配をばらまいていく。
一瞬だけクロークを大きく開いて姿を晒したデスサイズヘルに対し、カミーユは即座にビームライフルの照準を合わせて数射を叩き込むが、デュオはそれを誘いとして利用しており、真正面からではなく斜め上へ跳びながらバスターシールドを投擲し、Zガンダムの反応を試す。
Zガンダムは迫るバスターシールドのビーム刃に対してバイオセンサーの感応に従い、ギリギリのタイミングで機体をロールさせながらビームサーベルでこれを弾き、シールドは砕け散るものの、その間にデスサイズヘル本体はハイパージャマーを最大出力で展開しながら背後方向へ回り込む動きを完了させている。
カミーユは「一つの殺意を斬った」のに、なお別の方向から圧迫感が迫ってくる違和感に気づき、ウェイブライダーへの変形を絡めた急激な反転機動で背後を取ろうとするが、そのわずかな意思の揺らぎをハイパージャマー越しに読んだかのように、デスサイズヘルは変形の隙を狙った軌道でツインビームサイズを振り下ろす。
ビームの刃はZガンダムのシールドを深く抉り、フレームごと斜めに切り裂いて破壊し、シールドは機体からもぎ取られたように宙を舞いながら爆発し、Zガンダムは防御の要を失った状態でなおも戦域を旋回しながら距離を取ることを余儀なくされる。
終盤戦
シールドを失ったZガンダムは、以後の被弾がそのまま致命傷に直結する状況へ追い込まれ、カミーユはバイオセンサーの共鳴をさらに強めて感覚を研ぎ澄ませ、デスサイズヘルの気配をより鮮明に「位置」として捉えようと試み、Zガンダムの機体各部には淡い光がまとわりつくような反応が現れ始める。
一方のデュオも、Zガンダムの可変機動とニュータイプ的な勘が予想以上に厄介であることを理解し、無理に長引かせればいつか局所的なカウンターを許しかねないと判断して、ハイパージャマーとクロークを用いた「最後の一手」に戦術を収束させていく。
カミーユは、気配が完全に消えたり濃くなったりを繰り返す異様な感覚の中で、ある瞬間だけ「自分の左前方から強烈な殺気が迫る」イメージを掴み取り、その方向へ向けてウェイブライダーによる突進とビームライフルの集中射撃を合わせたカウンターを仕掛け、あえて迎撃に転じる賭けに出る。
デュオはその反応すらも読んだうえで、左前方へ「わざと強い気配」を残すように機動しつつ、ハイパージャマーとクロークを駆使して実際の進路を大きく迂回させ、反対側の斜め後方からツインビームサイズを振り抜くための軌道を描き、疑似的にニュータイプの感覚を裏切るようなフェイントを成立させる。
Zガンダムはウェイブライダーで左前方へ突撃しながらビームライフルとグレネードを連射し、「そこにいるはずの敵」を焼き払うが、その瞬間、背筋を凍らせるような別方向からの殺気に気づき、慌てて変形と同時に機体を捻るものの、デスサイズヘルのツインビームサイズの軌跡から完全に逃れるにはわずかに間に合わない。
ビームの刃はZガンダムの背部バインダーとバックパックスラスターをまとめて斬り飛ばし、推進系と姿勢制御の大部分が一瞬で沈黙し、Zガンダムは慣性のみで宙を流される制御不能状態に陥り、バイオセンサーがなおも微かな光を放つ中で、カミーユは機体を爆散させないよう最低限の姿勢維持に専念するしかなくなる。
デスサイズヘルは、そのままトドメとしてコックピットを狙うことも可能な位置にいるが、一騎討ちとして既に十分な勝敗がついたと判断し、ハイパージャマーを再展開して完全に姿を消しながら戦域を離脱し、残されたのは無力化されたZガンダムだけという終幕を迎える。
勝敗分析
勝敗判定
この一騎討ちは、ガンダムデスサイズヘル(EW版)(デュオ・マックスウェル)がZガンダム(カミーユ・ビダン)の推進系と戦闘継続能力を奪い、機体を行動不能に追い込む形で勝利すると判定する。
結果分析
最大の決定要因は、ハイパージャマーとアクティブクロークによって得られる「情報優位」と、ガンダニュウム合金装甲による「被弾許容量」の差であり、Zガンダムがバイオセンサーとニュータイプ能力で気配を掴んでも、視覚とセンサーに頼らない精密な照準と継続的な火力集中を行うには限界があったと言える。
カミーユはニュータイプの勘と可変機動によって、何度も見えない死角からの接近を紙一重で回避し、一時的にはデスサイズヘルにとって危険なカウンターを成立させかけたが、その度にガンダニュウム合金装甲とクロークがダメージを吸収し、デュオに再度の奇襲チャンスを与えてしまった。
一方、デュオはZガンダムの反応とカミーユの勘の鋭さを早期に見切ったうえで、「気配をあえて残す方向」と「実際に斬りかかる方向」をずらすフェイントを多用し、ニュータイプの感覚そのものを逆手に取って最終局面の決定打を通しており、暗殺者としての経験と勘が戦術面で大きく上回った。
Zガンダム側にとってシールドの喪失は致命的なターニングポイントであり、それ以降は一度の被弾が即座に致命傷となりうる状況へと追い込まれたため、カミーユはますますバイオセンサーに頼らざるを得なくなり、結果として感覚と直感に依存した高リスクの賭けに傾いていった。
総じて、このカードは「感応で敵を捉えるニュータイプ」と「情報を消して近づく暗殺用MS」という構図でありながら、最終的にはハイパージャマーによる情報遮断とフェイント技術、そしてガンダニュウム合金の防御力が、バイオセンサーの爆発力とZガンダムの柔軟な可変機動を僅差で上回った結果となった。
敗者側に勝利の可能性はあったか？
Zガンダム側にも勝利の可能性は存在し、特に序盤から中盤にかけて、ハイパージャマーの影響で精密なロックオンが困難なことを割り切り、戦域の一部を「捨てエリア」として大量のビームとグレネードで塗りつぶし、その中にデスサイズヘルを巻き込むような広域制圧戦術を徹底していれば、推進系やクロークの一部を損傷させていた可能性は高い。
また、ウェイブライダー突撃を「決め技」ではなく「撹乱と離脱」の手段として使い、決して真正面からの接近を行わずに、常に斜め上や斜め下からの変則的な角度で離脱と再接近を繰り返していれば、デュオ側の読みも多少は狂い、ツインビームサイズの一撃を通すチャンスは減っていたと考えられる。
さらに、もし戦場に小惑星帯やデブリが存在する環境であれば、Zガンダムは障害物の陰から一瞬だけ姿を見せるスナイパー的な運用が可能となり、デスサイズヘル側のステルス性も「どこから来るか分からない」という強みがやや薄れるため、カミーユのニュータイプ的勘とバイオセンサーの優位がより生きる展開も期待できた。
ただし本シミュレーションの前提である「障害物のない真空宇宙」という条件下では、ステルスと暗殺を前提に作られたガンダムデスサイズヘル(EW版)にとって理想的な環境であり、Zガンダムが勝つためにはより極端なリスクを取る必要があり、その分だけ敗北の確率も増大せざるを得なかったと言える。
まとめ| Zガンダム vs ガンダムデスサイズヘル(EW版)
Zガンダム vs ガンダムデスサイズヘル(EW版)というカードは、可変MSの柔軟な戦術性と暗殺用MSのステルス性が真正面からぶつかり合う、レンジと情報戦を主軸とした高度な読み合いの一騎討ちとなり、単なる火力や装甲の比較では語り尽くせない奥行きを持つ対決である。
結果としては、ハイパージャマーとアクティブクローク、ガンダニュウム合金装甲、そしてデュオ・マックスウェルの暗殺者としての経験が噛み合ったガンダムデスサイズヘル(EW版)が、Zガンダムの推進系と戦闘継続能力を的確に奪い、カミーユのニュータイプ能力とバイオセンサーの爆発力を上回る形で勝利を収める結末となった。
しかしその過程では、カミーユが何度も「見えない死の手」を感知しては紙一重で回避し、局所的にはデスサイズヘルにとって危険な一撃を通しかける場面もあり、条件や環境、カミーユの精神状態次第では勝敗が入れ替わりうるだけのポテンシャルを秘めたカードであることも示されている。
ニュータイプの直感と暗殺者のステルス戦術という、ガンダムシリーズでも異色の能力同士が交錯するこのマッチアップは、MSスペックだけでなく「どうやって情報を得て、どうやって相手から情報を隠すか」という戦術レベルの駆け引きを味わううえで、非常に興味深い一戦だと言える。
