グリプス戦役期の可変MSZガンダムと、F91へと繋がる小型高出力機の試験機であるガンダムF90Vタイプが、障害物のない真空の宇宙で一対一の決闘を行うとき、それは「世代差」と「感応力」が真正面からぶつかる、技術史的にも興味深い一戦になる。
片や全長のある第二世代MSに可変機構とバイオセンサーを組み込み、パイロットの感情と感応力を増幅して一時的に常識外れの機動と出力を引き出すZガンダムと、片やF91世代の技術に連なる小型高推力フレームにVSBRというビームシールドすら貫通しうる試験兵装を載せたガンダムF90Vタイプでは、純粋なカタログスペックでは後者に分があるが、決闘という条件下ではそれだけで勝敗が決まるほど単純ではない。
カミーユ・ビダンは自らのニュータイプ感覚とウェイブライダー機動を組み合わせ、F90Vタイプの照準とアルゴリズムが読み切れない角度とタイミングから斬り込もうとし、デフ・スタリオンは試験パイロットとして培った機体理解とVSBRの特性を活かし、小型機らしい姿勢制御と高加速を駆使してZガンダムの懐に入らせない立ち回りで応じようとする。
この戦いは、可変MSの瞬発的な爆発力とサイコミュ予備軍とも言える感応力が、VSBRによるシールド貫通と小型高出力フレームの前にどこまで通用するのかを検証するような、実験的かつ熾烈な一騎討ちとして描かれていく。
戦力分析
機体
Zガンダム
ZガンダムはMS形態とウェイブライダー形態を高速に切り替えながら戦う可変MSであり、その細身のシルエットと各部に分散配置されたスラスター群が、宇宙空間での細かいベクトル変更とロールを可能にし、長機体ながら「照準の乗らない的」として立体的な機動を描けるのが最大の武器になる。
主兵装のビームライフルは当時としては高出力で、腰部グレネードランチャーやシールド内グレネード、ハイパー・メガ・ランチャーを運用できる状況であれば瞬間火力も高く、近接ではビームサーベルと足裏ビームガンの組み合わせで相手の死角から装甲を削ることができるため、懐に入り込んだ際の決定力は十分に高い。
ウェイブライダー形態では機体全体が楔形の突入体となり、長い直線加速からの変形を絡めて敵機の側面や背面に一気に回り込む「突入からの急制動」を得意としており、これにバイオセンサーの覚醒が重なると、敵パイロットから見れば予兆の乏しい「読めない突撃」として認識されるほどの異常な切り返しを見せることもある。
また、コクピット後方に組み込まれたバイオセンサーはパイロットの感応力と感情をトリガーに、機体レスポンスやビーム出力を一時的に底上げするだけでなく、極限状態ではビーム巨大化やバリア生成、果ては敵サイコミュ系への干渉とも取れる現象を引き起こすことがあり、決闘環境では「追い詰められたZガンダムほど危険」という逆転要素として作用する。
ガンダムF90Vタイプ
ガンダムF90Vタイプは、F90フレームにVSBRユニットを装着した高機動高火力仕様であり、F91へと至る小型高出力MS技術の過程に位置するため、その全高はZガンダムより一回り以上小さく、反面として推力重量比と慣性制御能力で大きく勝り、宇宙空間での加速と減速、姿勢変更は第二世代MSとは別次元のキレを誇る。
最大の特徴であるVSBRは、ビームの速度と収束率を可変させることで、Iフィールドやビームシールドなどの防御システムに対して透過性を持たせたり、装甲内部でのエネルギー密度を最大化して貫通力を高めたりできる実験的な兵装であり、単純な出力だけでなく「防御を抜くためのビーム」という性格を持つため、一対一の決闘では非常に危険な切り札となる。
F90Vタイプは小型機らしく機体断面積が小さく、姿勢制御スラスターの応答性も高いため、遠距離ではVSBRによる狙撃と高機動回避、中〜近距離では高出力ビームサーベルによる斬り合いを選択できる万能性を持ち、しかもそのどちらのフェーズでも「相手より半テンポ早く動ける」という小型高出力機ならではの優位性を発揮できる。
一方で、VSBRは最大威力射撃時にはチャージや照準安定に僅かながら時間が必要であり、その間の挙動はどうしても読みやすくなるため、相手がニュータイプでかつ可変機動を多用するZガンダムである場合、その「溜め」を見切られて死角から斬り込まれるリスクがあることが、この機体にとっての最大の不安要素になる。
パイロット
カミーユ・ビダン
カミーユ・ビダンは高いニュータイプ能力と柔軟な空間認識を持ち、敵機の軌道や意図をセンサー情報に頼らずとも直感的に読み取り、相手の一手先、二手先を感じ取るような回避とカウンターを繰り出すことができ、その反応速度はグリプス戦役において歴戦のエースたちを翻弄するレベルに達している。
可変MSであるZガンダムの複雑な機構も、彼にとってはほとんど自分の手足の延長として扱われており、ウェイブライダーでの突入からMS形態への変形、ビームサーベルでの斬撃、慣性を生かした離脱までを滑らかな一連の動作として実行することで、相手の照準アルゴリズムに捉えにくい「分節のない動き」を生みだしている。
精神面では繊細で感情の振幅が大きく、追い詰められるほどバイオセンサーとのシンクロ率が上がり、機体性能を限界以上に引き出す一方で、その代償として状況判断が攻撃的に偏り、高リスクな賭けに踏み込みやすくなる傾向もあり、決闘においては「爆発力と危うさ」を同時に孕んだパイロットと言える。
デフ・スタリオン
デフ・スタリオンはF90のテストパイロットとして様々なミッションパックとフレーム特性を熟知しており、特にVタイプに関してはVSBRのチャージタイミングや熱管理、反動を含めた挙動を、数多くの試験と模擬戦を通して身体で理解しているため、「試験兵装を安全域を超えてまで攻めに使える」貴重な実戦パイロットとなっている。
彼はオールドタイプでありながら、機体の加減速と慣性ベクトル管理に優れ、センサー情報と経験則から敵の次の一手を予測するタイプであり、小型高出力機のポテンシャルを最大限に引き出す意味では理想的なパイロットだが、ニュータイプのように「意図そのもの」を感じ取るわけではないため、カミーユのような感応力の高い相手と対峙した場合、瞬間的な読み合いで一歩遅れを取る場面もありうる。
とはいえ、デフはテストパイロットとして「未知」を恐れず、むしろ機体限界を探るような攻めの操縦を厭わない性格を持っているため、F90Vタイプのポテンシャルを実戦域ギリギリまで引き出し、VSBRのチャージや出力調整に関しても、リスクを承知の上で決闘向けの大胆な使い方を選択してくるだろう。
Zガンダム vs ガンダムF90Vタイプ|戦闘シミュレーション
序盤戦
戦闘開始と同時に、Zガンダムはウェイブライダーで広い外周軌道に乗り、ビームライフルによる単発射とグレネードランチャーのばら撒きで中距離を測りながら、F90Vタイプの反応速度とVSBRのチャージ挙動を観察するように、わざと一定のリズムで射線を送っていく。
ガンダムF90Vタイプは小型機ならではの高レスポンスなスラスター制御で、Zガンダムの射線を紙一重でいなしながら距離を詰めつつ、通常ビームライフルの射撃でカウンターを行い、その間に一門のVSBRを低出力モードで試験的に放ち、Zガンダムのシールドと装甲がどの程度までなら透過されるかを探るような探りの一撃を混ぜてくる。
カミーユはその一瞬だけ空間の粒子の揺らぎが変わった感覚を覚え、シールドに走った細い焼け跡から「さきほどのビームは普通ではない」と直感し、以後はシールドを正面に固定するよりも、機体全体を斜めに構えて装甲でかすめるように受ける回避を選択し、VSBRの直撃だけは絶対に許さないという方針へと切り替える。
デフはZガンダムの可変軌道が予想よりも読みづらく、ウェイブライダーへの移行タイミングも含めて「一呼吸早い」動きをすることに気付くと、VSBRの高出力チャージを早々に通すのは危険と判断し、序盤は通常ビームと低出力VSBRによる牽制に留め、まずはカミーユの回避パターンと変形のクセをデータとして蓄積することを優先する。
この時点では両者とも決定的な有効打を与えられず、Zガンダムはシールドと外装にVSBRの擦過痕やビームによる浅い損傷を、F90Vタイプは装甲の一部にビームライフルとグレネードの破片痕を負う程度に留まり、静かながらも高度な情報戦と探り合いを伴う序盤戦となる。
中盤戦
中盤戦に入ると、カミーユはF90Vタイプがビームライフルと低出力VSBRを交互に使いながら距離を調整していることから、「真に危険な高出力VSBRはまだ温存されている」と見抜き、あえてウェイブライダーで直線的な突入を一度だけ行うことで、敵にVSBRのチャージを強要し、その挙動を視覚と感覚で掴む作戦に出る。
Zガンダムはウェイブライダー形態で一気に加速し、F90Vタイプとの距離を一気に詰めながら、機首部分からビームライフルの射撃を散発的に行い、デフの注意を誘導しつつ、その接近角度を微妙に変化させて、VSBRの照準が追いづらい斜め上方からの侵入を試みる。
デフはその直線的な接近を見て、ここが高出力VSBRを試す好機と判断し、フレームを一瞬固定してチャージに入りつつ、もう一方のビームライフルで牽制射撃を続けるが、その僅かな姿勢固定とエネルギーチャージのタイムラグを、カミーユのニュータイプ感覚は敏感に捉え、「今がVSBRの溜めだ」とほとんど確信に近い感覚を得る。
ZガンダムはVSBRの発射直前の気配を感じ取った瞬間に、ウェイブライダーからMS形態へと急変形し、機体を大きくロールさせながら推力方向を切り替え、ビームの通り道を紙一重で外れるような軌道を描き、そのすれ違いざまにビームサーベルを抜き放ってF90Vタイプの脚部スラスターとサブスラスターのクラスターを薙ぐ斬撃を浴びせる。
VSBRの高出力ビームは虚空を裂いて遠方へ消え、代わりにF90Vタイプの片脚側面と後部スラスタークラスターがZガンダムのサーベルで大きく抉られ、高速機としての左右バランスを大きく崩してしまい、小型高出力機でありながら、一瞬だけその姿勢制御が大きく乱れる致命的な隙を晒す。
しかしデフはテストパイロットとしての経験から、推力の偏りを補正するために残存スラスターと慣性制御を瞬時に組み替え、機体の姿勢を大破に至らない範囲で立て直しながら、近距離に残ったZガンダムに対して、ビームサーベルと残存スラスターを使った強引な体当たり気味の斬り合いに持ち込もうとする。
Zガンダムも至近距離での格闘戦に応じ、ビームサーベル同士の打ち合いと、足裏ビームガンによる不意打ちを絡めた近接戦が一時的に発生するが、F90Vタイプは小型であるがゆえに旋回半径が小さく、腕部や脚部の振りも短くて速いため、純粋な「剣戟のテンポ」ではZガンダム側がやや押され始める。
カミーユは長期の格闘戦が不利と判断し、足裏ビームガンを噴かして姿勢を崩した瞬間に、グレネードを至近距離で投射して爆炎で視界を遮り、その反動を利用して大きく後退しながら再び中距離戦へ移行しようとするが、その退き際にF90Vタイプのビームライフルがシールドを貫通しかける一撃を放ち、Zガンダムのシールドは大きく焼き切られ、機能をほぼ喪失する。
この段階で、F90Vタイプは脚部スラスターと外装に損傷を抱えたものの、まだ機動力は致命的ではなく、Zガンダムはシールドを失い装甲の一部にまでVSBRとビームの焦げ跡が広がりつつあるという、互いにダメージを負った拮抗状態で終盤戦へと突入していく。
終盤戦
終盤に差し掛かるころ、カミーユのコクピット周辺にはバイオセンサーの緑光がぼんやりと立ち上り始め、Zガンダムのスラスターと操舵系は再び限界を超えたレスポンスを見せ始める一方で、F90Vタイプは脚部スラスター損傷による推力バランスの乱れを補正しながら戦うため、総合的な機動力は序盤よりわずかに鈍っていく。
カミーユはこのわずかな「鈍り」を嗅ぎ取ると、残存する機体エネルギーと精神力を一点に集中させるように意識を研ぎ澄ませ、ウェイブライダーによる再突撃を決め手とするため、VSBRの再チャージタイミングとF90Vタイプの姿勢固定の瞬間を一撃のためのトリガーとして待ち構える。
デフは自機の損傷を冷静に把握しつつも、小型高出力機としての優位がまだ残っていると判断し、再び高出力VSBRを決めるために、Zガンダムを外周へ誘い出しながら、その回避パターンを一段深く読むべく通常ビームでリズムを刻み、相手の「癖」をチャージ中のアルゴリズムにフィードバックしていく。
やがて、F90Vタイプが再び姿勢を固定し、高出力VSBRにエネルギーを集中させる瞬間が訪れ、機体周辺の空間がわずかに重く感じられるような粒子の密度変化を、バイオセンサーで増幅されたカミーユの感覚が生々しく捉えた瞬間、Zガンダムは全推力を前方へ叩き込み、ウェイブライダーへと変形して光の矢のような突入を開始する。
ウェイブライダーとなったZガンダムはVSBRの射線を紙一重で外れるよう、チャージ方向から少し外れた斜め下方の軌道を選択し、ビーム発射のわずかな予兆を感覚で捉えた瞬間に機体姿勢をひねりながら通過し、そのすれ違いざまにMS形態へ変形しつつ、ビームサーベルをF90VタイプのVSBRユニット根元と胸部装甲へ叩き込むような斬撃を放つ。
サーベルはVSBRユニットの可動部とマウント部分を深く切り裂き、片側のVSBRは完全に沈黙し、もう片側も電力供給と冷却ラインにダメージを受けて高出力射撃が困難になるが、その代償としてZガンダムも変形直後の姿勢が不安定なところへ、F90Vタイプのビームライフルと残存VSBRの中出力射撃を至近距離で浴び、胴体とバックパックに致命的な焼損を受ける。
Zガンダムはスラスターの多くを失い、機体全体から火花とガスを撒き散らしながら漂うような状態に追い込まれ、MSとしての機動戦はもはや困難になり、カミーユはバイオセンサーの光がさらに強まる中で、最後の一撃としてビームサーベルを構えたままF90Vタイプへの突進を試みるが、その動きはすでに可変機としての切れ味を失っている。
F90VタイプもVSBRユニットを大きく損傷しているが、小型フレーム本体の推力と機動はまだ生きており、デフは残存スラスターとビームライフルを最大限に活かし、Zガンダムの最後の突進を冷静に側面からかわすと同時に、横合いから胴体部とコクピット周辺を狙った集中射撃を行い、Zガンダムを完全に沈黙させることで、辛勝ではあるが決闘に終止符を打つ。
勝敗分析
勝敗判定
この一騎討ちは、Zガンダムがバイオセンサー覚醒とウェイブライダー突撃を駆使してF90VタイプのVSBRユニットを大きく損傷させ、小型高出力機としての決定力を削ぐことには成功したものの、最終的にはガンダムF90Vタイプが本体機動力と残存火力を活かしてZガンダムを沈黙させたため、F90Vタイプとデフ・スタリオンの勝利と判定する。
結果分析
F90Vタイプ側の最大の勝因は、小型高出力フレームによる高い推力重量比と姿勢制御能力により、Zガンダムの可変機動とウェイブライダー突撃を受けてもなお、致命傷を避けながら再度態勢を立て直し、VSBRが満足に使えなくなった終盤でも、ビームライフルと機動力だけで決定打を作れる余力を残していた点にある。
中盤〜終盤にかけて、Zガンダムはウェイブライダー突撃とサーベル斬撃でF90Vタイプの脚部スラスターとVSBRユニットを順に損傷させ、「あと一押しで機体を行動不能に追い込める」ところまで追い詰めたが、その過程で自らもシールドと装甲、スラスターを酷使し続けた結果、終盤には機体全体のレスポンスが著しく低下し、最後の突進時には小型機相手に十分な変化と加速を付けられない状態に陥っていた。
一方で、デフは試験パイロットとしての冷静さを保ち、VSBRの高出力射撃を通すことに固執しすぎず、ユニット損傷後は即座に「残存火力と機動力で戦う」プランへ切り替えたことで、損耗戦にシフトした終盤でもF90Vタイプの優位を維持できたことが大きく、ここで判断を誤りVSBR再使用にこだわっていれば、逆にZガンダムの最後の突撃を許した可能性もあった。
カミーユのバイオセンサー覚醒は、VSBRのチャージタイミングを読み切って高出力ビームを空振りさせるという大きな戦果をもたらし、フレーム技術上の世代差を部分的には埋めてみせたが、最終的な「しぶとさ」と「装甲の余力」において、小型高出力機でありながら高水準の耐久性も備えるF90Vタイプに一歩及ばなかったという構図になっている。
敗者側に勝利の可能性はあったか?
Zガンダム側に勝ち筋があるとすれば、それは中盤で脚部スラスターを損傷させた直後、もしくは終盤にVSBRユニットを切り裂いた瞬間に、あえて距離を取らず連続してウェイブライダー突撃とサーベル斬撃を重ね、F90Vタイプの本体コアと推進機構をまとめて破壊するような「刺し違え覚悟の連撃」を選択することで、相打ちかそれに近い形での勝利を狙うルートだったと考えられる。
バイオセンサーがさらに強く覚醒し、F90Vタイプの動きを半ば金縛りのように拘束したり、サーベルのリーチやビーム出力がオカルトじみた伸びを見せる展開になれば、VSBRをほぼ封じられた小型MSに対してZガンダム側が一気に畳み掛け、フレームごと粉砕するドラマティックな逆転も理論上はありうるが、それは再現性の低い例外的なパターンに属する。
平均的な条件と冷静な戦術選択を前提にすると、Zガンダムは可変機としてのトリッキーな機動とニュータイプ的な読み合いで善戦はできるものの、小型高出力フレームとVSBRを持つF90Vタイプに対しては、被弾の一発一発が致命傷になりうるリスクが常につきまとい、長期戦に持ち込むほど機体損耗の差が広がっていくため、「一瞬の爆発力」に依存した勝利条件しか掴めないのが実情となる。
したがって、Zガンダム側の勝利はバイオセンサー覚醒とパイロットの判断が完璧に噛み合ったときのレアケースとして存在しうるものの、総合的な勝率としてはF90Vタイプとデフ・スタリオンの方が上回ると見るのが妥当であり、今回のシミュレーションのような「激戦の末の辛勝」パターンが主流になると評価できる。
まとめ| Zガンダム vs ガンダムF90Vタイプ
Zガンダム vs ガンダムF90Vタイプという一騎討ちは、グリプス戦役期の可変MSとF91に連なる小型高出力試験機という、技術世代の異なる二機が「可変機動と感応力」対「VSBRと小型高出力」という形で理念ごとぶつかり合う、非常に見応えのあるカードとなった。
カミーユとZガンダムは、ウェイブライダー突撃とバイオセンサー覚醒によってF90Vタイプの脚部スラスターとVSBRユニットを順に損傷させ、VSBRという切り札をほぼ封じるところまで追い詰めることに成功し、「旧世代機でもニュータイプとバイオセンサー次第でここまで食い下がれる」という意地を示したが、その過程で自らも致命的な損傷を蓄積してしまい、最後の一押しを欠いた。
デフとガンダムF90Vタイプは、VSBRの高出力射撃を決めきれなかったものの、小型フレームと高推力スラスターによる機動力、そして試験パイロットとしての冷静な判断力によって、損傷後も残存火力と機動を最大限に活かし、最終局面でZガンダムの突撃をいなしながら確実に撃ち抜くことで、辛くも一騎討ちを制している。
総合的に見て、この対決はF90Vタイプ側が有利ではあるものの、Zガンダム側にもバイオセンサー覚醒と連続ウェイブライダー突撃を軸とした細いが確かな勝ち筋が残されており、世代を跨いだ決闘として非常にドラマ性の高いマッチアップになっていると言える。

